田辺駅前の松屋が丹精こめて作る新食感の和菓、銘菓・田辺大根(2023年5月閉店)

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銘菓・田辺大根とは

田辺大根の葉が入った羊羹(ようかん)と、田辺大根のしぼり汁が入った軽羹(カルカン)が調和する、新食感の和菓子です。軽羹(カルカン)には山の芋を練り込んで蒸しあげた、しっとりふんわりした食感。生姜を入れて寒天で固めたほんのりと甘い羊羹をそれでサンドしています。

※松屋様は惜しまれながら2023年5月29日に閉店されました。

絶妙な風味と食感の違いを楽しめるお菓子と聞くと大人向けのように感じますが、実は案外と子どもたちに人気があります。毎年、長池小学校の児童が毎年春に田辺の歴史を学ぶまち歩きをしており、そのコースに松屋さんが入っています。そこで銘菓・田辺大根を半分食べさせてもらいます。そして持参した水筒のお茶を飲みほすと、子どもたちの表情は笑顔に。店主の松井さんからは、このお菓子づくりの苦労話を聞いて学びます。

松屋の歴史と銘菓・田辺大根のきっかけ

さて、お店のご主人、松井和雄さんは和菓子屋さんの2代目です。先代は昭和26年に創業。その後に店の前の道路が4車線に拡幅されることになり、現在の場所に移りました。当時の田辺のまちには茶道や華道の教室がたくさんあって、上生菓子の注文で大忙しだったそうです。

松屋さんでは和菓子屋さんの定番の商品は一通りご用意されています。しかし、生まれ育ったまちにちなんだ、オリジナルの和菓子をつくりたいと考えておられました。その時に田辺大根の復活のことを新聞で知りました。松井さんはすぐ近くの田辺小学校の出身です。田辺小学校の校章は田辺大根の葉をモチーフにしているほど、田辺大根と縁が深い。そこで田辺大根ふやしたろう会を立ち上げて活動を始めていた、北田辺の吉村さんにさっそく相談します。それは平成12年(2000年)のことでした。

銘菓・田辺大根の誕生秘話

田辺大根をわけてもらった松井さんは、初めは形だけ大根に似せたお菓子を試作してみたそうです。でもしっくりこない。やはり田辺大根の素材そのものを使ったお菓子にしたいと考えていたとき、和菓子づくりの先輩が、中国に大根餅というのがあるで、と教えてくれました。中国のそれは、大根と、米粉、もち粉を練った生地を蒸した点心です。そこから着想して、山の芋に田辺大根のしぼり汁を加えて蒸しあげた独特の生地が生み出されました。

半分に切って盛り付けた田辺大根

さらに、田辺大根の葉を活かします。スーパーでみかける一般的に大根の葉とは異なり、田辺大根には毛がありません。ほうれん草のようにしっとりと柔らかで栄養価も高く、食材としても貴重です。細かく刻んだ田辺大根の葉を入れて生姜をブレンドして寒天で固めた羊羹を、田辺大根の果汁を加えた山の芋を蒸した生地ではさんでみました。調合の加減や塩梅が非常に難しかったそうです。松井さんの職人技で、美味な上に滋養もある、他にない個性的なお菓子ができました。完成まで実に3年を費やしました。

ただ、田辺大根の収穫時期は12月が中心でそれ以外の季節は手に入りません。そこで、葉は冷凍保存して一年中使えるように工夫しましたが、しぼり汁の方は保存がききません。そこは折り合いをつけて、旬の季節はすべて田辺大根、それ以外の季節は羊羹の部分だけに田辺大根の葉を使用しています。銘菓・田辺大根は年間を通じて提供されていますが、とくに旬の季節に味わってみてください。

松屋さんのパッケージを手掛けている印刷会社のデザイナーに、このお菓子によく似合う包みと箱をデザインしてもらいました。

銘菓・田辺大根は自宅で食べるのはもちろん、地域の伝統野菜でつくられた和菓子ですからお土産に持参すれば話題にもなります。お茶うけにも最適です。お客様にたいへん評判となり、松屋さんの主力商品に育ちました。

少し残念なお話し

さて、苦労して作り上げた和菓子ですが、今年、来年で最後になるかも知れません。長らく一人で和菓子づくりを手掛けてこられましたが、そろそろ引退をお考えです。せっかく苦労して生み出した商品だし、地域の方に喜んでいただいているので、どなたか作ってくださる方がいたら相談にのるのだけど、とご主人は少し寂しそうです。ぜひこの機会にご賞味いただきたいと思います。

銘菓・田辺大根は一つ162円(税込)で一つずつお求めいただけます。山の芋は丹波篠山の上質な一品を使っていますがこのお値段!8個入りのオリジナルパッケージ(税込1382円)や15個入り(税込2624円)の手土産用もお買い求めいただけます。お正月の手土産にいかがですか。

松屋さんの和菓子はどれも甘さ控えめの上品な味です。いろんな和菓子もぜひご賞味ください。専用のホームページのお問合せフォームからも注文ができます。

銘菓処 松屋

大阪市東住吉区田辺田辺2丁目1−2

地下鉄田辺駅から徒歩1分、JR南田辺駅から徒歩9分、地下鉄昭和町から徒歩15分

近鉄南大阪線今川駅から徒歩7分

9時~19時 火曜定休 06-6621-2675 (年末は大晦日まで営業)

http://www.meika-matsuya.com/

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この記事を書いた人

地域に密着するスタイルでまちづくりのコンサルティングに従事。その経験を活かして大阪ミナミの戎橋筋商店街の事務局長としてエリアのプロモーションやリノベーションに取り組んでいます。一住民として地域活動では阿倍野区~東住吉区のbuylocal活動、町会活動(防災担当部長)、小学校での伝統野菜指導やまち歩きなどを行っています。2013年から2022年まで大阪公立大学観光産業戦略研究所客員研究員。

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