身近なよきお店を日常使いする、昭和なまちのバイローカル活動

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今年もバイローカルの日は11月1日㈫に開催されます。9回目となりました。今年は50店舗が参加します。会場は長池公園(会場には徒歩でのご来場にご協力ください)、開催時間は11時~17時(コアタイムは11時~15時)です。

筆者は昭和なまちで「バイローカル」について取り組んでいるビーローカル・パートナーズの一人で、大阪田辺通信のエリアもエリアに含まれます。昭和なまちのバイローカルの始まり、活動の経過、新しい展開についてご紹介します。

もくじ

バイローカル活動に取り組む「昭和なまち」とは?

バイローカル活動が行われている「昭和なまち」は、大阪市阿倍野区の南の方で東住吉区や住吉区の一部も含まれます。町名で言えば、東天下茶屋、王子、文の里、昭和町、阪南町、南田辺や西田辺などの地域です。

これらの地域は共通した歴史をもちます。図は昭和7年の地形図です。あびこ筋や御堂筋線がまだ通ってなくて、碁盤目のように道が整備されています。大正末から昭和の初め、大阪市が大大阪といわれた頃、人口が増えて住む場所が必要になりました。旧集落の周辺の農地が土地区画整理事業によって街になり、長屋や戸建てが立ち並びました。今でも良質な長屋がたくさん残っています。緑の色がついたエリアが昭和なまちのバイローカル活動のエリアです。

バイローカル活動が始まったきっかけ

昭和なまちのバイローカル活動は、どっぷり昭和町というイベントに参加する中で生まれました。まちを回遊してもらえるように、桃ヶ池公園内の広場を活用してマーケットを企画することになりました。普通のマーケットでは知恵がないということで、メンバーの一人から「バイローカルという考え方がある」というアイデアが出されました。

それはアメリカのボルダーで始まって、全米にひろがった運動だということでした。さっそく情報を集めましたが、ハワイの取り組みをホームページで見つけたくらいで、なかなかありません。ようやく探し出したのが、龍谷大学で教鞭をとっておられた矢作弘先生が書かれた「大型店とまちづくり(岩波新書)」でした。その中で紹介されている言葉に目がとまりました。当時アメリカでチェーン大型店と闘っている地元商店の連合体が掲げているキャッチフレーズです。

「地域を考えるThink Local、地域で買物をするBuy Local、地域にこだわって暮らすBe Local」          

 また、独立系ビジネス連合の運動目標は次の3つでした。

◆ 地元商店の売り上げをもっと伸ばす

◆ そのため地元商店がコミュニティにとってどのような価値があるかを消 費者にアピールする

◆ 地元商店ができる限り地元で造られたものを調達・販売し、オースチンらしいまちづくりに貢献する運動を展開する

今やスーパーマーケットはなくてはならない生活施設です。しかし、私たちの暮らしを豊かにしていくためには、多様なお店があることが大事であることを学びました。アメリカの取り組みに学びながら「バイローカル・マーケット」の開催コンセプトをまとめました。

空き店舗が増えている商店街の中でがんばっているお店、商いを通じて社会に必要なことを提供するお店、地域活動によく協力している店主、何より個性的な魅力に富む商い・・・。そのような良きお店を地域住民がもっと知って、日常的に利用していくことが豊かな暮らしにつながると考えました。

バイローカル活動はどんなことをしているの?

お店と住民をつなぐという考え方で取り組みを展開しています。

まず、お店を紹介するマップです。地域住民に自宅に置いてもらって日常的に足を運んでもらうための重要なツールです。毎年1万部刷ってバイローカルの日の来場者に配り、残りはお店にお渡して置いていただきます。紹介しているお店は、メンバーが推薦しあい、お店の了解をいただいて掲載しています。掲載しているお店はエリア内のお店の一握りであり、よきお店はまだまだあると思います。

毎年秋に「バイローカルの日」を開催しています。バイローカルは365日が基本ですが、年に1度知らなかったお店と一堂に出会える場であり、日常づかいが始まる最初の一日です。

運営の考え方は、

・出店者はメンバーが推薦し合い参加を依頼する。 ※公募はしていません。

・出店者はお店の魅力を伝える機会として、来場者との交流を大切にしていただく。

・会場運営もコンセプトに合わせた演出や運営を大切にする。

告知は、協力してくださる地元町会の回覧やお店でチラシを置きあうなど、範囲は地域住民にしぼっています。マーケットが終わった次の日からお店に足を運んでほしいからです。

会場内で「どこから来ましたかマップ」にご自宅の場所をシールで貼ってもらって来場範囲がわかります。大半が地域住民ですが、参加店さんもSNSで告知していただくので、地域外の方ももちろん来られます。

当日の運営はメンバーと、近畿大学や今年は桃山学院大学の学生さん、ボランティアスタッフで行います。学生さんは手伝いを通じていろいろ学んだり、感じていただく貴重な機会となります。

クックブックという冊子もつくりました。飲食店さんのレシピを公開してもらう取り組みです。今やレシピが流行りとなっていて、近所のお店がより身近に感じることができます。感染拡大時には飲食店さんのテイクアウト情報をブログを活用してお知らせしました。

バイローカル活動に取り組んでいるメンバー

バイローカル活動は、この地域で暮らす10名のメンバーが「ビーローカル・パートナーズ」を設立して、話し合いながら取り組んでいます。活動費は、バイローカルの日に参加いただいたお店さんの参加費や講演料でまかない、マップや広告はすべてそこから拠出しています。

バイローカル活動について尋ねてみました

一昨年に、お店と住民の両方にアンケートをとりました。(店舗は26店、住民は136人が回答)

お店の方では、バイローカルによって日常的に利用する人ができたが約3割、たまに利用いただく方ができたが6割にのぼりました。来場者にお店の内容を理解してもらえた、少し離れた場所からも来店していただけるようになった、他店との交流ができた、というご意見も。

住民の方では、バイローカルの日で知ったお店をたまに利用するが64%ありました。少しずつ日常づかいが広がっているのかと思います。バイローカルで暮らしの質が高まったり街の魅力が増したと感じる方が約9割にのぼりました。地域活動の幅が大きく広がった、住んでよかったという気持ちになれる、どこに住んでも同じということが改善されて良い、冊子やマーケットで初めてのお店に出向くようになった、といったご意見をいただきました。

バイローカル活動の新たな展開

この取り組みが大阪メトロさんの目にとまり、様々な協力をさせてもらっています。大阪メトロさんは沿線に人が住み、商いが根付くことによって持続的に鉄道経営ができますし、不動産などの新しい事業も地域に根差して進めたいとお考えです。その意味でバイローカルの考え方はぴったりだということで、魅力あるお店を紹介する冊子づくりや、空き建物を借り上げてお店の誘致を行うといった事業を実際に進めておられます。ビーローカルパートナーズのメンバーが個々の専門を活かしてお手伝いしています。

昭和なまちの未来図」は、私たちのまちは将来どうなってほしいのか、アイデアを出し合ってイラストにまとめました。身近なお店を使うことが地域をよくするというメッセージをイラストで表して、地域の住民やお店の方々が、まちのことを共に考えるきっかけになればとの思いです。先ほどのマップと一緒に各お店で配ってもらっています。

さいごに~あなたも身近なよきお店を見つけて利用してください!

顔がわかる生産者から仕入れて確かな技術で製造するお茶屋さんや漬物屋さん。醸造所に足を運んでワインを買い付けている酒屋さんや地酒専門の酒屋さん。

商店街の食堂を継いだカフェレストランや寿司屋を継いだ居酒屋さん。ナポリピッツアやスペインバルといった新進気鋭の店主のお店。

国産の食材や身体によい食材を選んで使っているおばんざい屋さんやカフェレストラン、ベーカリーです。

アート作品とふれあう場を提供しているギャラリー。絵画造形教室アクセサリー教室、カフェを併設しているギャラリーでは作家さんの作品とふれあうことができます。手仕事の工房も多く、洋裁店や革小物を製造されるお店は、流行を追わず長く使えるものを創り出しています。

バイローカルを始めてから本屋さんが5店舗も増えました。町家空間でセレクトした本を販売するお店、日替わり店主制の古本店、青少年の居場所をつくっている古書店。

地域活動を支える主の洋食店、子育てする親の居場所となる喫茶、レンタルスペースのあるカフェ、地域になじむゲストハウス、福祉施設で製造されたお菓子をおくカフェ。

戦前長屋で営業されるカレー店さんや洋風長屋をリノベーションした古着屋さん、空き駅舎を活用したベーカリー・マーケット、あえて寂れた通りで商いを始めは地域に活力を吹き込む八百屋さん。

みなさんのご近所にもきっと良きお店があると思います。見つけて利用してください。

バイローカルのサイト

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この記事を書いた人

地域に密着するスタイルでまちづくりのコンサルティングに従事。その経験を活かして大阪ミナミの戎橋筋商店街の事務局長としてエリアのプロモーションやリノベーションに取り組んでいます。一住民として地域活動では阿倍野区~東住吉区のbuylocal活動、町会活動(防災担当部長)、小学校での伝統野菜指導やまち歩きなどを行っています。2013年から2022年まで大阪公立大学観光産業戦略研究所客員研究員。

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